ちょっと聞かれたので、韓国の包茎と振り込め詐欺とEDについて

ツイッターで韓国の包茎手術についての中央日報の記事をリンクしたら、複数の方から感想をいただいた。
「驚きました」
そうなのか。
私はオンナなので、その手術に関心をもったことはなく、ただこれも韓国社会の急変化の一つなのだろうと思って何気にリンクしただけ。


「韓国で包茎手術が急激に減った理由は?」
http://japanese.joins.com/article/145/166145.html

包茎手術を受ける男性がこの10年間に大きく減ったことが明らかになった。ソウル大のキム・デシク教授(物理天文学部)と中央大のバン・ミョンゴル教授(動物資源科学)教授らは昨年12月11日、科学誌「BMCパブリックヘルス」に「韓国男性の包茎手術の減少」という論文を発表した。
 論文によると、00年当時、過去10年間に包茎手術を受けた男性は全体の75.7%だったが、2011年には25.2%に減った。10

 変化の原因は記事の中で以下のようにまとめられている。

最近、包茎手術が減ったのは▽インターネットなどによる医療知識の広がり▽個人衛生状態の向上▽青少年の自己決定権を尊重する社会の雰囲気−−が挙げられる。00年代に入り、新生児の包茎手術が「トラウマ」を残すという研究結果も出てきた。

 この中にもあるけど、2000年に「新生児の包茎手術が残すトラウマ」が発表されたことは大きかったと思う。当時、ニュースでは痛さに泣きわめく赤ちゃんの映像がニュースで流され、「恐怖心が脳の無意識層に記憶され、そのことによって怯えやすい人格をつくる」みたいな解説がされていた。
 私がそのことを印象的に覚えているのは、これによって「見かけとちがって怖がりである韓国男性」の「原因」にガッテンしたからだ。
テレビを見ながら我が意を得たり、ガッテン、ガッテン、ガッテン。
(まみちゃんほどではないが、私も印象に残ったことはかなり忘れない)

一方で、今回の記事の中で笑ったのは、「青少年の自己決定権を尊重する社会の雰囲気−」という部分。

ソウル大のチョ・ビョンヒ教授(保健大学院)は「かつて包茎手術は他の外科手術とは違い、親が未成年者の子どもにさせていた」とし「親の世代とは違い、青少年の自己決定権を尊重する社会の雰囲気が形成されたことも手術を減少させた」と解釈した。

なるほどね。この記事の冒頭でも、お母さんが息子に包茎手術を勧めたら反論されたとあった。

日本で暮らす人が驚くのは、おそらくここらへんかもしれない。
私はオンナなので母親とこんな会話するはずもないが、弟と母親の会話としても想定しにくい。思春期って、そういう部分から母親とサヨナラするんだと思っていた。

でも、韓国はそうではなかったわけだ。

これで私が思い出したのは今から8年前、『特選小説』という雑誌に連載していた「ビビンバの国の女たち」に書いた「振り込め詐欺(当時はオレオレ詐欺)」についてのコラム。
びっくりしたのは、事件を報道するニュースでだまされた母親が「息子が勃起不全(!)の治療に110万w(約11万円)かかるからって言うから」と言っていたこと。

以下、コラムを再掲載。興味のある方はどうぞ。

「韓国の上陸したオレオレ詐欺

日本では依然として韓国ドラマが人気らしい。NHKは『冬のソナタ』に引き続き、10月からは『美しき日々』(2001年SBS)の地上波再放送を決定したとか。主演のイ・ビョンホンにも女性ファンの熱い視線が集まっているという。
ヨン様の次はビョン様かあ。ところで、私は彼に会ったことがある。といっても個人的にどうこうじゃなくて単なる記者会見なのだが、じかに見る彼は映画やテレビよりも数倍カッコよかった。眼光鋭く、声は甘く、そして言葉の使い方に知性の影が見える「大人のイイ男」。最近、日本の芸能界にはこのタイプが少ないらしく、それがオバサマたちの心をつかんでいるようだ。また、韓国ドラマにはアメリカやヨーロッパのそれにはない親近感がある。
「まるで、ちょっと前の日本社会を見ているような既視感。なつかしさがあるんです」
日本に住む友人はこう言っていたが、これってどこかで聞いたことがある。そう、かつて韓国に団体旅行していた日本の中年男性たちが、韓国での夜遊びの楽しさをそんなふうに言っていた。結局、男でも女でも、ある年齢以上の日本人にとって、韓国は「いつか来た道」。感情移入も楽なのだろう。
ただ、これはいつまで続くかわからない。というのは、韓国社会の変化が激しすぎて、いつまでも「ちょっと前の日本」を残しておいてくれそうにないからだ。私がそれを強く感じたのは、最近聞いた二つのニュースによる。一つは「韓国の出産率は世界最低」という報告、もう一つは「オレオレ詐欺が韓国にも上陸した」という事件である。

8月25日、韓国の統計庁は2003年度の出生率は1.19という衝撃的な数字を発表した。これは前年度に続き世界最低(!)。出生率とは15歳から49歳までの女性が一生のうちに何人の子供を生むかを示す数字で、正式には合計特殊出生率といわれる。現在の人口を将来にわたって維持するには2.08が必要だそうで、これ以下ということはつまり人口が減少していくことになる。ちなみに日本の場合は1975年に2.0を割り込み、今年は過去最低の1.29を記録したが、韓国はこれよりもさらに低いことになる。日本でも大騒ぎの「少子化問題」は韓国ではもっと深刻なのである。
「このままでは、韓国は老人ばかりの国になってしまいます。皆さん、なんとかしなければ……」
ニュース番組ではキャスターが悲壮な表情で叫び、有識者が集まって「保育所の拡充」や「政府の財政支援」など通り一遍のことを訴えているが、簡単に効果があがるとは思えない。名門梨花女子大学で行ったアンケートでは、回答者の30%が「一生子供はいらない」と言い切ったという。
崩れつつある韓国の家族主義。『冬のソナタ』も『美しき日々』も、複雑な家族関係がドラマをおもしろくさせているだが、少子化ではこういう複雑さは望めない。

さらに、9月9日のMBC「ニュース・トゥデイ」のヘッドラインは、「ナヤ、ナー詐欺に注意」。日本の「オレオレ詐欺」が韓国にも上陸したというものだ。報道によれば、他人の家に無作為に電話をかけ、女性が出たら息子や夫のふりをしておびき出し、その女性からお金を巻き上げたり、暴行したりしていた30歳代の男性が逮捕されたという。被害者は5人。犯人は動機について、「試しに電話して“ナヤ、ナー”(俺だよ、俺)と言ってみたら、おもしろいぐらいひっかかった」といっているらしい。
 これには驚いた。実のところ私は、「オレオレ詐欺」こそは、まさに「純日本的な事件」だと思っていた。息子の声が聞き分けられないほどの希薄な家族関係にもかかわらず、お金を出してしまう「甘さ」。家族関係が濃密な韓国では、まさかあり得ないと思っていた。
 ところが事件は起こり、しかも所轄の警察関係者はこんなコメントを出していた。
「家族の頼みは断れないという韓国人の情緒を利用した、まさに韓国的な事件」
なるほどね。日本的であることは、すでに韓国的であるのだ。
ただ、この事件ひとつだけ私の心を打ったことがある。被害者女性の一人は、テレビ局のインタビューに「てっきり息子からの電話だと思ったのです。勃起不全(!)の治療に110万w(約11万円)かかるからって。それで指定されたところにお金を持って出かけたのです」
勃起不全! つまりインポである。私は聞き間違いかと思って、インターネットでも確認したが、やはり被害者はそう言っている。母親が息子のインポ治療代を騙し取られた??――うーん、やっぱり韓国の家族関係は濃密かもしれない。