韓国でする「孤独のグルメ」②

韓国で広告代理店をやっている友人に頼まれて、ホテル置きのタブロイドにエッセイを書いている。何度もご飯をおごってくれて、「とにかく何でもいいから書いて」というので、まっいっかとライフワークの「独りグルメ」を連載をすることにした。
社長業に忙しく接待ご飯ばかり食べている友人は一通りのことしか言わないが、同年代の編集長には大変喜んでいただいた。彼もまさに「孤独のグルメ」派。
風貌もどことなく「井の頭五郎さん」に似ている。



焼きチャンポン
볶음짬뽕 
   

韓国で一人グルメの定番といえば、中華料理である。大韓民国全土、町内に必ず一軒はある中華料理店では、昼時となれば背広や作業服の男たちが、みんなテレビの方向を見ながら寡黙に食事をしている。
「それって、まるで日本のラーメン屋さん?」

一時期、ガイドブックなどで「チャジャン麺は韓国のラーメン」と解説されることがあった。たしかにチャンジャン麺もラーメンと同じく、中国本土にはない韓国中華のオリジナルであり、国民食といえるほどみんなに愛されている。

でも、違う。
ラーメンは中華料理から独立して発展し、日本全国に個性を競う専門店ができているが、チャジャン麺はいまだ中華料理店から出てこない。各店が個性を競うこともなく、逆に「約束された味」こそが魅力である。
それよりもチャンポンの方が近いかもしれないと、私は常々思っていた。

チャンポンの語源はあの長崎チャンポンである。19世紀末の長崎で、福建省出身の中国人が、貧しい清国人留学生のために作った麺料理。それが大正期(1912〜26)に入ってチャンポンと命名された、植民地時代の韓国に伝わった。山東省出身の華僑が作りだしたチャジャン麺とはルーツが違う。

長崎チャンポンならラーメンに近いかも? 
いやいや韓国のチャンポンと長崎チャンポンは全く別物。そもそも韓国チャンポンのスープは真っ赤で激辛、まさに「韓国の味」なのである。でも、これはこれで美味い。なかなか味のポイントがつかめないチャンジャン麺よりも、こちらの方が日本人には食べやすいと思う。私もランチに迷った時、「チャンポンでいいか」と、一人で中華料理店に入ることがよくある。

そんなチャンポン派のおかげだろうか。最近はチャンポン専門店できている。香港飯店、上海飯店、白いチャンポン…。次々に専門店が出来て、それぞれが個性的な新メニューを出してきた。

その中の一軒に「香港飯店4010」というフランチャイズ店がある。オーナーはフランチャイズのマイスターと言われる人物で、彼が手がけたものは大ヒットする。ここも例外ではなく、今や繁華街には必ず1軒はある「なじみのお店」となった。

チャンポン(4000w)は韓国人のランチ代としては安い方。お味はまあ普通かなと思うのだが、それよりも私が気に入っているのは「焼きチャンポン」(5500w)というオリジナルメニューだ。これはイカや豚肉、野菜などと一緒に麺をソースで炒めたもの。オイスターソースが使われているのだろう、味はまろやかで食べやすい。なによりも、これは韓国中華にこれまでなかった「焼きそば」。
ありがたくいただいている。