崔吉城著『米軍慰安婦の真実』を読んで

崔吉城先生のテーマは、いつも興味のストライクゾーンに入ってくる。先に書かれた『朝鮮出身の帳場人が見た慰安婦の真実』もそうだったし、植民地における宗主国の建築物に関する比較研究もそうだ。オリジナリティのあるテーマが、独自の調査と思考で論じら…

書評ーー朝鮮出身の帳場人が見た 慰安婦の真実―文化人類学者が読み解く『慰安所日記』

正直、『慰安婦問題』は苦手だ。にも関わらず、本を読み、感想を書こうと思ったのは、他ならぬ崔吉城先生の著書だからだ。私は先生をとても尊敬しているし、信頼もしている。崔先生ガお書きになったものなら、何でも読みたい。それが率直な動機だ。 本は一気…

関東大震災の日にー西崎さんの本の話

一昨日、日本に帰国しました。そして、今日は9月1日。この夏はずっと海外で仕事をしながら、4月に創刊した『中くらいの友だち』の最終編集をしていました。欧州や他のアジアの国から見る日韓の風景は、当事国で見るのとはずいぶん違っていました。細かい情報…

韓国でする1人グルメ その22 懐かしい食堂 チャガルチの麦飯屋さん

この夏、仕事で欧州にしばらく滞在していた。豪勢な食事よりも、普通のチーズとサラミ、新鮮なラデュッシュ、そこにガーリック漬けのオリーブと手軽なお値段のワインがあれば満足。もうそれでいい。白いご飯がなくても別に困らない。私にとって欧州は滞在し…

ある先輩の話

気づいたら在韓25年。まわりがほとんど後輩になった今、先輩の存在はとても貴重だ。 そんな大先輩の1人から電話があった。「高級果物」をたくさんもらったけど食べるかと。先輩は一人暮らし。いつもおすそ分けをいただいている。果物をもらいに待ち合わせの…

犬と人と戦争の悲しみ

私の母は釜山の街が大好きだ。特に夜になると一斉にガス灯をともす南浦洞あたりの露店が、幼い頃を思い出させるという。 私の故郷の街には戦争中に作られた遊郭があり、母の実家はその入口付近で商店を営んでいた。市電の終点にあったその街は「お上の政策」…

なぜ韓国で? マーズ(MERS)感染拡大の背景について

昨年のセウォル号に続き、韓国の市民生活を直撃したこの問題。学校は休校、行事は延期。昨年、修学旅行や遠足をキャンセルした学校は、今年もまた同じような状況になっている。 「子供たちは可愛そうだけど…」、仕方がない。ただ、報道されるほど市民生活が…

映画『君におよげ』 (韓国の体育教育のことなど)

ツイッターで日本の小学生のお母さんと、韓国の学校の話になった。そもそもは休み時間のドッチボールから始まった会話で、最終的に時間割を比べるという楽しい展開になった。入手した時間割はソウル市内の公立小学校5年生のもの。始業は8時40分、下校は2時30…

意表をつく風景ー釜山、五六島スカイウォーク

「意表をつく風景」が釜山には多い。開発と自然と人間。アンバランスなのだが、お互いを支えあっている。訪れる度に風景が変わる、常時現在進行形な感じはソウルも同じだが、海という圧倒的な自然があるだけに、そのコントラストが際立つ。スカイウォークの…

韓国でする一人グルメ その21 梨泰院のハラル料理

先日、米国人の友達と一緒に、米軍のベース内にあるレストランで食事した。とてもアメリカンな雰囲気のお店でいただいたのはスペアリブとチキンサンドイッチ。食べながらとても懐かしい気持ちになった。留学生として初めて韓国に来た90年初頭、ソウルの街に…

九龍マウル20141111

ここでも高齢者はペットと暮らし、花を育てる。

日本社会の分断を読んで韓国社会の分断を考えた

経済学は苦手だが、興味はとてもある。社会の基本なわけだし、学生時代に読んだマルクスの本などは読み物として面白かった。もっとも最近は周囲の「大人たちの会話」である景気や株の話題、私自身が深刻に関係する外国為替の変動という細部ばかりが毛穴をつ…

20141111 九龍マウル

21

韓国でする1人グルメ その20「中国苑」

ない、ない、なーい、どこ探してもない。メガネじゃない、リモコンじゃない。ないのは、いつも行っていたあの店。韓国で暮らす我々やリピーターの皆さんにとって、もっともショックなことの一つは大好きな店が姿を消すことだ。それは時になんの前触れもなく…

韓国でまたもやSATの不正があった件

韓国でまたSATの不正があったようだ。 「韓国会場の分だけ、点数が発表されない。内部調査中だって。無効になったらどうしよう」 米国の大学を受験予定の子供をもつ、韓国在住外国人の親たちの間でも、大騒ぎになっている。ネットをざっと検索してみたところ…

ソテジのビデオを見たりした…

フェイスブックの誕生日メッセージに、同級生からこんなメッセージをもらった。 「以前は、年とるの嫌だったけど、今は、誕生日を迎えるたびに、 やっとここ迄、生きてきたんだなあと感じます。特に最近、災害が多いから、生きていることは、当たり前の事で…

死をもって放たれよ 韓国人の看取り

今月号の月刊文藝春秋に、友人の菅野朋子さんが「『儒教の国』の孤独な老人たち」という記事を書いている。 http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/1133タイトルの「儒教の国」はカッコ付けになっているので、おそらくここが問題提起の一つなのだろう、敬老や…

「韓国が心配な韓国人」(日本が心配な私)

朝鮮日報のコラム「韓国が心配な韓国人」を読んだ。http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2014/10/%12/2014101200195.html 米国の世論調査会社ビュー研究センターが世界44カ国を対象に行った満足度調査の結果について、韓国国民は満足が28%、…

釜山国際映画祭2014

今年もまた釜山国映画祭に行ってきた。1996年の第1回目から今年で19回目、毎年かかさず出かけてる。初期は仕事だったが、最近はプライベートも多い、ふらっと出かけて適当に映画を見てくる。予約システムは完備されつつあるけど、出品作すべてのプロフィール…

東大門デザインプラザ

夢見て・作って・楽しむ 東大門デザインプラザ 2014年3月、着工から4年余りの歳月を経て、ついにオープンした東大門デザインプラザ。Dongdaemun Design Plaza の頭文字をとったDDPという呼称は、Dream(夢)、Design(創造)、Play(実践)という意味でもあ…

新しいアートの中心地

国立現代美術館ソウル館 2013年11月、計画から4年の歳月を経て景福宮の西側に新しくオープンした国立現代美術館ソウル館(MMCA)。展示室はもちろん、資料館、プロジェクト ギャラリー、映画館、多目的ホールなど複合的な施設が集まり、多彩な芸術ジャンルの…

事故10日目のメモ

事故からまる10日が過ぎだ。変わらぬ数字は174。初日にカウントされた救出者の数字は微動だにしない。懸命の救出活動は続けられているが、残念ながら成果を出せていない。 「これがもっと初期の段階で行われていれば」 誰もが悔しがるほどの懸命な救出活動を…

珍島沖の旅客船沈没事故、韓国社会の闇

韓国珍島沖の旅客船沈没事故から6日間が経過。韓国の主要放送局は連日特別枠で、事故関係の報道を続けている。現場の作業の進行は非常に遅く、いい話がほとんどないため、番組の多くは「バッシング」と「美談」などが重複して流されているだけだ。行方不明者…

韓国でする「孤独のグルメ」11

今年はかつてない暖冬のまま、気がついたら冬が終わりつつある。スキーは2回ほど行ったけど、それ以外はあんまり冬が楽しめていないような気がする。 冬季オリンピックは、周囲ではあんまり話題にならなかった。4年後は韓国で開催なのだから、もうちょっと前…

韓国でする「孤独のグルメ」⑩

韓国でする独りグルメ その10 川魚のメウンタンと五分付玄米定食 ソウルに雪が積もり、本格的な冬が到来したころ、ふとミンムルメウンタンが食べたくなった。ミンムルとは淡水のこと。つまり川魚のメウンタンだ、ソウルでメウンタンといえば、刺身の後に出て…

韓国人は伝統的にオメガ3好き

今朝の朝イチのオメガ3特集で、エゴマ油が紹介されていた。ああ、日本ではこんな感じなんだ。韓国人はクルミもエゴマも超日常食。エゴマについて取材した記事があるので、久しぶりにブログをアップ。韓国美人の理由? エゴマを美味しくいただく 韓国では、…

韓国でする「孤独のグルメ」⑧

最近は日韓関係が悪く、日本人観光客も激減しているようす。「日本人観光客26%減、航空・旅行・ホテル大打撃」 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/10/29/2013102901344.html この記事、内容は見出しほど嘆いておらず、特に中国人観光客…

韓国でする「孤独のグルメ」⑦

数日前からソウルは一気に秋になった。朝は17度、日中はまだ日差しは強いものの、真っ青な秋空が美しい。いい季節だ。 こうなったら、こうなったらで夏が名残惜しい。 四季のある国で暮らす人間はぜいたくだ。 韓国でする「孤独のグルメ」⑦ 晋州会館のコンク…

映画『雪国列車』を見ながら思ったことなど

8月に韓国に戻り、映画を立て続けに見た。理由はもう多くの韓国の皆さんと同じ、驚くばかりの暑さのせい。しかも連日の異様な湿度の高さは、かつて経験したことのないものだった。夏好きな私が生まれて初めて「早く秋が来てほしい」と思った。それほど暑かっ…

韓国でする「孤独のグルメ」⑥五壮洞の咸興式冷麺

前回は平壌式冷麺の話を書いたので、今回は咸興式冷麺の話を少し。 冷麺に平壌式と咸興式があるのは、よく知られた話だ。平壌式=「ムル(水)冷麺」(牛だしやトンチミを使った冷たいスープ麺)、咸興式=「ビビン(混ぜ)冷麺」(甘辛の具材がのったスープ…