『婚約破棄:「在日差別意識に起因」 女性が市議を提訴』という毎日新聞の記事に関して

ツイッターで話題になっていた毎日新聞の記事。

婚約破棄:「在日差別意識に起因」 女性が市議を提訴
http://mainichi.jp/select/news/20130128k0000e040180000c.html

婚約相手だった兵庫県内の自治体の30代男性市議に自分の祖父が在日韓国人だと告げたところ、婚約を破棄されたとして、大阪市の会社員の女性(28)が市議に550万円の損害賠償を求める訴訟を大阪地裁に起こした。市議側は結婚できない理由として「政治的信条から消極的にならざるを得なかった」と説明しているが、女性側は「差別意識に起因し、不当だ」と批判している。人権問題に詳しい専門家からは市議の対応を問題視する声が上がっている。

いわゆる「結婚差別事件」ということだろうか。こういうことは、残念ながら古今東西いたるところにある。私が暮らしている韓国という国では、テレビドラマの大半はそれがテーマ(民族差別に限らず、貧富・階層・その他いろいろの差別を乗り越えて男女が結ばれる)になっており、日常生活でもそんな話ばかりで、あまり驚かなくなっている。なるほど、日本では裁判になり、賠償請求は550万円かあ…。判決が出てみないとわからないけど、それが一応の「差別の相場」なのだろう。

私自身も思春期にはいろいろ悩みもしたけど、最近はこういう話に接すると、「相手の本性が早くわかってよかったね」と思う。韓流ドラマでは、意地悪な金持ち家族側が劇的に変化し、差別を乗り越えて二人は幸せになるのだけど、まあ、現実社会では難しい。(だから飽きもせずドラマのテーマになる)。
人間(大人)はそんなに簡単に変わらないもちろん例外はあるけど、いい人は最初からいい人だし、卑劣な奴はずっと卑劣な場合が多い。
「人間を変えることはできませんよ。うまくやるには自分が変わるか、我慢する。あきらめるしかない」ーー結婚50年ぐらいの夫婦がよく言うセリフだ。
ひるがえって、「在日だから」「日本人だから」「金持ちだから」「貧乏人だから」ではなく、相手をちゃんと見て交際・結婚しましょうという話だ。

その意味でも、私はこの記事の別の部分が気になった。

提訴は昨年10月。訴状などによると、市議と女性は結婚相談所の紹介で同3月に知り合った。市議は同6月、「あなたのことが大好きです」などと書いた手紙を渡して「結婚したい」と伝え、女性も承諾した。しかしその数日後、女性が自分の祖父は在日韓国人だと市議に伝えると、市議は「韓国の血が流れている」などとして婚約を破棄したという。女性自身は日本国籍だった。

28歳女性と30代の市会議員。3月に結婚相談所を通して知り合い、6月にプロポーズ、その直後に「婚約破棄」、10月に提訴。「在日云々」もさることながら、私にとってはそれ以外のこともちょっとびっくりした。
・28歳の女性が結婚相談所に行く
・30代の市議会議員が結婚相談所に登録している
・知り合って3カ月で結婚を決める
・わずか4ヶ月後に提訴。

日本はそういう国になっていたのか。しばらく前に日韓女性の結婚事情を調べたことがある。なかなかいい資料がなかったのだが、『負け犬の遠吠え』の著者として知られる酒井順子さんが2009年に出した『儒教と負け犬』(2009年、講談社)は参考になった。東京都とソウルと上海の三都市に住む独身女性に対して行われた「婚活」アンケートの結果があったのだ。

「結婚対手を見つけるためにしていることは?」という問いに、ソウルでは58.3%の人がお見合いをし(東京では4.2%)、56.3%の人が合コンをし(東京は31.7%)、さらに15.9%の人が結婚相談所を利用して(東京は4.2%)いた。

儒教と負け犬』はテーマ設定そのものに、「儒教文化圏という共通項」への過剰な期待があり、そのためにちょっとザンネンな結果になっている。欧米諸国との対照を描くならともかく、三国をそのまま比較してしまえば浮き出てくるのは共通点よりむしろ相違点であり、それを説明するためには「三国の儒教の違い」こそが重要なのだが、そこには踏み込めていない。ただ、酒井さん自身の素直な驚きや、編集者の方々ががんばったと思われるアンケート結果などは非常に面白い。

そこでは、東京の女性の結婚相談所利用度は、ソウルよりも、上海よりも、ものすごく低かった。そのほかの手段を加えても、日本女性は結婚のためにもっとも努力しない人たちだった。

時代は変わってきているのですね。
ならば結婚相談所の調査欄に、最初から政治信条を書く欄をもうけたらいいかもしれない。
保守とか革新とか。自分はノンポリだけど父は極左とか。あるいは原発、TPP,改憲増税、2%のインフレターゲット…。
そういう結果まで考慮してくれる結婚相談所があったら私も登録してみたいかも。むしろ中高年の婚活には必須かもしれない。