魚のカルパッチョ韓国風

ずっと前、食の邪道について話題になったことがあった。

話の発端は、うちの父が食事全般(味やら行儀やら)に関してとてもうるさいわりには、素麺入りの味噌汁を好んだという話。うどんなどの主食ならともかく、おかずの汁に炭水化物って「邪道な気がする」と言ったら、友人は「食に邪道なんかあるのか」と反論してくれた。

そうだよね。踏み外すところから、美味しいものがどんどん生まれる。それこそ私の出身地の隣の名古屋では、イチゴ大福やら天むすやら、奇をてらったものが全国区にまでのし上がった。私の学生時代には、栄の一等地にパイナップル入りのトロピカルラーメンなんてのも出ていた。パイナップルの真ん中には真っ赤なチェリー。社長はやる気まんまんだったのだろうな。

ところで、先日、釜山のチャガルチ市場で、とっても邪道な食べ方を見てしまった。当初は面食らったが、あまりにも邪道なので、私もやってみたら、これが不思議に引き寄せられる。あきらかに別物の味、でもなぜかやめられない。

ヒラメのお刺身の白キムチ包み。

材料は①新鮮なヒラメのお刺身 ②白菜キムチの古漬け(唐辛子未使用の白いもの) ③酢コチュジャン ④サンチュやエゴマの葉など ⑤ニンニクスライス

もともと韓国の人々はお刺身も焼肉みたいに葉っぱに包んで食べる。そこにコチュジャンやニンニクも入れるのは、衛生学的には理にかなったことかもしれないが、私には受け入れられなかった。
やはりお刺身はワサビ醤油。もちろん、韓国の刺身レストランにもワサビ醤油はあるのだけど、あくまでも付録。よって美味しくない。

そこで、日本の人の中には「マイわさび」「マイ醤油」は持ち歩く人もいる。でも、それはなんとなく、失礼な感じがする。だから、これまでは刺身レストランそのものに近づかなかったのだけど…。

これは美味しい! 

古漬けの重い味と白身魚の淡白さが絶妙。辛いキムチだと、強すぎて刺身の味がわからなくなってしまうのだろうけど。
こうなれば、ワサビ醤油のことは忘れて、この方法で美味しく食べることに集中したほうがいい。エゴマの葉に包む、ニンニクトッピング…。なるほどね、韓国の人々はこんな美味しいものを食べてきたのか。

「刺身と考えるからいけない。これはもう「魚のカルパッチョ韓国風」ですよ」とその道の専門家から一言。なるほど、その通りだ。