ソテジのビデオを見たりした…

フェイスブックの誕生日メッセージに、同級生からこんなメッセージをもらった。
「以前は、年とるの嫌だったけど、今は、誕生日を迎えるたびに、 やっとここ迄、生きてきたんだなあと感じます。特に最近、災害が多いから、生きていることは、当たり前の事では、ないと感じます」
同級生は日本に住んでいて、震災や最近の台風や御岳の火山爆発などを見ながら、実感を込めてメッセージを書いてくれたのだと思う。

同じかな、私も。
韓国の人はこんな気持を、「生きていてくれてありがとう」という言葉で表す。一番よく聞いたのは、朝鮮戦争で生き別れになった人々が再会した、南北離散者家族の対面のシーンだ。年老いた親子や兄弟が互いの顔をなであいながら、そう言って泣き崩れた。
「生きていてよかった」ではなく、さらに踏み込ん「ありがとう」。
生きてきたお互いを讃え、その奇跡に感謝する。思えば、生まれてきたのだって奇跡だったのだ。

御岳噴火の直後に、韓国では換気口での墜落事故があった。
日本の知り合いから「日本は自然災害、韓国は人災が問題だね」と言われた。彼女があらためてそう言うまでもなく、日本は自然災害という宿命を背負って、社会システムを発展させてきた。世界でも類を見ないほどの几帳面なシステムや国民性は生き残りのための選択だった。韓国は地震も台風も火山爆発もめったにない。日本のように繰り返し反省を求められ、改善を迫られるようなことはなかった。

世界有数の几帳面国から来た日本人は韓国で暮らすと、想像を絶するようなずさんさに驚く。もっとも最近は以前と違い見た目綺麗だから、最初は気づかないことも多い。でも、工事や修理の様子を見て、いきなり心配になる。定期点検がされていないことに気づき、震える。
「通気口の上に乗ってはいけない」
「屋上の柵にもたれてはいけない」
「マンホールのそばには近づかないように」
「1人でエレベーターに乗ってはいけない」
子供が生まれた時から口酸っぱく言ってきた。近所の子がエレベーターを利用しても、うちだけは階段を登らせた。「なんでうちだけ」とぶつぶつ言っていたが、その代わりにゲームなどはやり放題だったので、「それも我が家の個性」と納得していたという。

「そんなに韓国を信用していないんですか?」
聞いてくるのは普通の日本人や韓国を知らない在日韓国人だ。
「信用していません。私だけでなく、韓国人だって信用していない人はたくさんいます。」
韓国人の中には、私より韓国を信用していない人もいる。海外で暮らしの経験のある韓国人はもちろんだが、そうでない人の中でも怯えたように暮らす人々がいる。顕著なのは食品で、わざわざ外国のオーガニック食品を取り寄せている人々もいる。あるいは、修学旅行などの予定地に、親が先の乗り込んで安全点検をする。セウォル号事故以前からいろいろなことがあり、親御さんの気持ちはわかるのだが、点検すべきポイントが的を得ているとは思えない。
行動がちぐはぐなのは、仕方がない部分もある。より安全な状態を知らないのだから。日本だって、外部から危ないなと思われることはいろいろある。たとえば子供の1人下校など。それが当たり前の人は気づかない。同じく、大多数の韓国人は韓国のシステムしか知らない。

シン・ヘチョル氏が亡くなった。
民主化後の韓国のミュージックシーンのヒーローの突然の死は大ショックだった。まだ48歳、あんなに元気に活躍していた人がどうしたんだ。まさに寝耳に水だった。
腹痛を訴えた彼が、江南のS病院で腸閉塞の手術を受けたのが10月17日。
昏睡状態で牙山病院に運ばれたのが22日、そして27日の夜、帰らぬ人となった。
その直後、シナウィのギタリスト、シン・デチョルはフェイスブックにこう書き込んだ。

「へチョル、俺が復讐してやる」
Daechul Shin
10月27日 21:37 ·
너를 떠나보내다니 믿을수가 없구나.
이 말은 하고 싶지 않았다만
해철아 복수해 줄게.
https://www.facebook.com/daechul.shin.75?fref=nf

韓国のニュース報道などによれば17日の手術の後、体調不良を訴えて何度が病院を訪れたという。亡くなる直前の27日朝のデイリーニュースの記事は日本語に翻訳されている。
http://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2006563

シン・ヘチョルの所属事務所であるKCAエンターテインメントによると、シン・ヘチョルは17日に急な腹痛を訴えソウル松坡(ソンパ)区S病院で検査を経て小腸閉鎖症の手術を受け、2日後の19日に退院した。翌日の20日午前、手術を受けた部位の痛みと微熱によってS病院で2回のわたって診察を受けたが、腹膜炎ではないという診断を受けた。
以後22日午前、腹部及び胸部の痛みでS病院に入院したが、急に心配停止の状態になった。心肺蘇生を行ってソウル峨山(アサン)病院に移送されたシン・ヘチョルは腹腔内臓手術及び心膜手術を受け、現在危篤の状態だ。

事務所の発表通りの経緯だとしたら、病院の過失が問われない理由はない。
現在は5日葬の最中で、友人たちもメディアも家族を思いやり、故人や業績をふりかえることを第一としているが、セウォル号以降ただ不安定になっている韓国の人々の気持ちは、ますます悪化するだろう。政治が機能していない状態では、怒りは社会の分裂をさらに深めるだろう。

こういう時こそ、シン・ヘチョルがいなきゃいけなかった。
なんとういう悲劇なのだろうと思う。

ソテジがつい先日だした新譜のミュージックビデオ。
独裁政権時代の記号が散りばめられた内容だ。
この再従兄弟はもうすでに泣いていた? 不思議な響きだ。
http://www.youtube.com/watch?v=nzEebkOJA-I&feature=youtu.be


追記)故シン・ヘチョルさんの遺族、「S病院の手術に同意していなかった」
http://m.sportsseoul.jp/article/read.php?sa_idx=13633