自殺大国になってしまった韓国

9月10日は国際自殺防止デーということで、韓国でも日本でもマスコミは自殺に関する報道をしていた。とくに韓国は自殺率(人口10万人あたりの自殺者数)が33.5と世界で1位。2位はリトアニア、3位はカザフスタン、4位はベラルーシ、そして第5位がわが日本23.8と続く。

ずっと以前、私が韓国で暮らし始めた1990年には、まさかこんなことになるとは思いもせず、在日韓国人の友人の中には「韓国はケンチャナヨの国。韓国人は自殺なんかしない。それは日本人の民族性だ。わははは」みたいに、豪語していた人がいた。もっとも私自身も、「確かに、日本は湿度が高いから。まさに苔むす国。その点、韓国は空気もからっとしているからね」などとトンチンカンなことを言っていた。

実際、その頃の統計などをみると、韓国の自殺率は7.5ぐらい。すでに20超えを経験していた日本とは明らかに違った。それがいつからだろう。韓国人の「民族性」が変わってきた。2000年代半ばには日本を超えてどんどん上昇、芸能人や大統領までも気の毒な結果となってしまった。

それにしても、この話題が出るたびに日本と韓国は残念ながら似ているのかもしれないとも思ってしまう。だって自殺率ベスト10の中には欧米先進諸国も、他のアジアの新興国も入っていない。旧ソ連や東ヨーロッパの国ばかりの中で、唯二、韓国と日本が仲良く登場。ただ、すべてが同じというわけではない。

まず大きな特徴は、韓国は高齢者の自殺率が異様に高いということだ。9月11日付けの「中央日報」は社説のタイトルも「韓国の高齢者自殺、日米の4〜5倍とは」とある。
http://japanese.joins.com/article/269/159269.html?servcode=100§code=110

特に65歳以上の高齢層の自殺予防対策に集中しなければならない。高齢者自殺率は10万人当たり81.9人で全体平均の2.4倍だ。日本の17.9人、米国の14.5人の4〜5倍水準だ。2010年の全自殺者の4人に1人以上に当たる28.1%、4378人が高齢者だ。

国際統計は国よって統計の取り方が違うため、比較はむずかしいのだが、日韓の比較に関しては、以下のものが見やすい。

年齢    韓国    日本
15〜24   8.4    11.8
25〜34   15.6    22
35〜44   20.8    27.7
45〜54   25.8    37.9
55〜64   32.1    40.9
65〜74   42.6    32.1
75〜79   85.3    32.1


2008年保健福祉家族部の自殺統計『立ち遅れた所得補償と急速な高齢化の影響』朴光駿より)

これは2008年の数字をもとにしたものだが、現状もあまりかわりはない。日本でもっとも自殺率が高いのが55〜64歳の中高年ならば、韓国では75歳以上の高齢者だ。しかも85.3という、統計のある国ではダントツ、あり得ないほど高いのである。
 
 一方、韓国のマスコミは今回、青少年の自殺率上昇についても問題にしていた。
「韓国青少年の自殺率 10年で倍増」(中央日報 2012.9.12)
http://japanese.joins.com/article/411/159411.html?servcode=400§code=400

 *1

これは確かにゆゆしきことだ。
ネット上では、「死亡原因のうち自殺が1位なんて、やはり韓国はひどい国だ」という書き込みをもあったが、さて、それはどうだろうか?
取り急ぎ、日本の資料を探してみた。
「平成22年度の自殺の概要資料」(警察庁)によれば、19歳以下は2.4、20〜29歳は22.9となっている。

http://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/H22jisatsunogaiyou.pdf

でも、19歳以下でくくってしまうと、分母が大きくなるので、韓国の数字と比較はできない。そこでいろいろ検索してみたところ、『自殺対策白書平成23年版』(内閣府)を掲載しているブログがみつかった。
http://ameblo.jp/kokkoippan/image-11106591470-11670638811.html

これによれば、日本では10代、20代、30代とも死因のトップは自殺。とくに20代、30代ではそのパーセンテージが50%近くもあり、これは他の先進諸国ではあり得ないことだという。ちなみに10代は31.2%と、韓国の28%より高くなっている。

つまり日本では青少年、韓国では高齢者の問題が深刻ということになる。

ところで、韓国は儒教国であり、高齢者は大切にされているという印象が強い。少なくなったといえ電車やバスの中では席を譲るし、目上の人への言葉づかいは小学生でもきっちりしている。なのに、どうして自殺率が高いのだろう? 
知り合いの韓国男性(50代)に質問をぶつけてみたら、「つまり自分の望むような待遇が受けられないからでしょう。自分たちの父親世代に比べたら、その権威失墜は屈辱的ほどですよ」という答えが返ってきた。

たしかに、主に家庭内で父親の地位は急低下している。この男性にとっては、それがまさにゆゆしき問題なのだろう。
でも、それだけではないだろう。高齢者問題に詳しい韓国の研究者が示した資料によれば、自殺動機は次のように順位づけられている。
 1位 本人の疾病(35.9%) 2位うつ(19.6%)3位子女との葛藤(9.8%) 
 (『立ち遅れた所得補償と急速な高齢化の影響』朴光駿)
 あるいは別の調査によれば、過去の1年間に自殺しようと思った65歳以上高齢者の動機は、疾病と障害40.8%、経済的困難(29.3%)、孤独(14.2%)、家族の不仲(10.4%)となっている。(統計庁2008)

病気と経済的困難。つまり、これは高齢者の貧困問題である。その背景には福祉の立ち遅れ。年金や生活保護の未整備という問題がある。
そして、高齢者自殺の報道にたびに出てくる「これ以上、子供たちに迷惑をかけたくない」という遺書。「生きていると家族の迷惑になる」と考える高齢者が多いのだ。
経済が急激に発展し、平均的な暮らしがどんどん豊かになるからこそ、「お金」が重要になる。「お金」がなければ、「家族のきずな」すらも維持できない。そこは、国がなんとかしなくちゃいけないのだが………。

*1:15〜19歳の2010年の自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)は8.3人。青少年の死亡原因のうち自殺が占める割合は2000年の14%から2009年には28%に増え、死因1位となっている。