きたか、台風の目? アン・チョルス

ついに出ててきたか、韓国大統領選に台風の目?
6日間だけのソウル市長候補「安哲秀(アン・チョルス)」とは誰?

「このままで行ったら、パク・クネ?」
多くの人々を暗澹とした気持にしていた韓国の大統領選挙。「いや、誰か必ず出てくるよ」と期待されていた台風の目の一人目は、若者に人気のベンチャー企業家、アン・チョルス氏だった。

学校給食の無償化をめぐって、8月26日に辞任した呉ソウル市長の公認を決める補欠選挙。ふってわいたような立候補説と5日後の「辞退」記者会見。これが逆にアン・チョルス人気を一気に押し上げることなり、ついに大統領選出馬説まで飛び出した。韓国は今、新聞もネットもこの「アン・チョルスシンドローム」、でもちきりだ。

ところで、アン・チョルスとは誰か?
韓国のネイバーニュースをググってみると、最初に登場するのは1990年。コンピューター・ウィルスをめぐっての記事だ。1990年といえば、韓国でIT革命がおこる10年前。韓国でのPCユーザーは全国でわずか1500人にすぎなかった。

当時、アン氏はまだお医者さん。大学の医学部に籍を置きながら、PCのウィルス研究を始めていた。キャンパスにはまだ民主化運動の残り香があり、歴戦の勇士の中には政界入りをめざす人もいたが、彼はそちらの人ではなかった。

その後は90年代半ばまでは、PCの普及などでちょくちょく名前がでているが。、彼が時代の寵児となるのはもう少し跡だ。1990年代後半のアジア金融危機ITバブル時代、アン氏は大学の医学部をやめて、コンピューターセキュリティーの会社を立ち上げた。それが大成功、彼は若手ベンチャー起業家のリーダーとして一躍注目を浴びるようになった。

さらに、さまざまな社会現象についてもはっきりと意見することで、若い世代から絶大な支持を集めた。たとえば、2001年にはある新聞がこんな記事を載せている。それは大学生への「こういう人になりたい」というアンケート調査の結果で、アン氏は3位にランクされている。
男子 ①イ・ゴニ(サムスン会長)②パク・チャノ(当時ドジャーズ、現オリックス) ③アン・チョルス

http://news.naver.com/main/read.nhn?mode=LSD&mid=sec&sid1=102&oid=038&aid=0000052834

ちなみにこの時、女子があげたのは全員がテレビ局の才色兼備キャスターだった。

ところで、彼がこのたびのソウル市長選挙で、候補を譲った相手はアルンダウン財団の朴元淳氏。市民運動系の人だ。安氏は「候補一本化」と言って候補者を辞退したが、そもそもこの二人は両方とも無所属だ。しかも支持層に共通点はあまりなく、唯一の共通点は2大政党以外の候補というだけ。つまり「一本化」というのは、つまり反二大政党候補といった意味で、本来的にはかなり無理がある。
しかし、ハンナラ党にとっても、民主党にとっても、これは大変なことになった。今回の市長選の結果は、来たる大統領選挙にあまりにも大きな影響を与えることになる。

世論調査では、アン・チョルスがパク・クネを抜いた。
ほっとしている人が周りに多い。

それにしても、ちょっとうらやましい。
東京都知事選、さらに今回の民主党選挙と、私たち日本人はあまりにも空しい時間を過ごしているだけに、まだ人々が政治に真剣になれる隣国がまぶしい。ちなみにアン・チョルス氏は風貌が橋下知事にちょっとだけ似ている。
「でも、アン氏は寡黙だから」
だよね。

以下は中央日報にのっていたアン・チョルス氏のサムスン批判。
今や飛ぶ鳥を落とす勢いのサムスンに、その系列新聞でこのようにのたまってしまう、そらへんが幅広い人気の秘密でしょうね。さらに、妻が美人でないのもまた、格好いい。本当にアタマのいい男は、美人妻の権威を必要としない、はい、ポストモダンだ。

ソウル大融合大学院長が警告「三星、このまま行けば亡びる」(1)
http://japanese.joins.com/article/722/141722.html?servcode=300§code=300


安哲秀(アン・チョルス)ソウル大融合科学技術大学院長(49)は「世界的な天才も10個のアイデアのうち一つを成功させるが、私たちは天才1人がアイデア一つを出し、失敗すれば埋葬される」と述べた。 その理由について安哲秀氏は「私たちの社会は失敗を容認しないため」とし「見込みがある社会であるほどリスクテイクをするが、私たちは賢い人たちがこれを避ける」と指摘した。

先月27日、ソウル巡和洞(スンファドン)中央日報人材開発院で開かれた「中央ビジネス(JB)フォーラム」でだ。 フォーラムは中央日報産業部記者の学術会だ。 安氏は「このままいけば三星サムスン)のような大企業も亡びる」と単刀直入に話した。 安氏の「大企業敗亡論」は世界で起きている情報技術(IT)企業創業ブームが、なぜ韓国だけを取り残しているかを説明する途中で出てきた。 韓国社会全般の「失敗を容認しない文化」が、韓国が競争国より先に動く「ファーストムーバー(first mover)」の足かせとなっており、三星のような大手企業も例外ではないということだ。

−−最近、韓国がIT創業ブームから取り残されている理由は。

「4つある。 創業者の実力不足、劣悪な創業インフラ、大手企業と中小企業間の不公正取引慣行、ゾンビエコノミーだ。 (韓国ではベンチャー投資が少ないため、代表が連帯保証で銀行から融資を受けて事業を始め、事業が振るわなくても負債のために整理しない。 その代わりにダンピングをして政府の支援を受け、一種の‘ゾンビ企業’になって延命すると説明)。大企業の形態もゾンビエコノミーにつながる。 良いベンチャーがあれば合併・買収(M&A)をし、ベンチャー投資家がお金を回収できるが、そのままその企業と独占契約を結び、いわゆる‘三星動物園’‘LG動物園’式に閉じ込めておくのでベンチャー投資が増えない」
ソウル大融合大学院長が警告「三星、このまま行けば亡びる」(2)
2011年07月12日15時16分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
−−しかし安哲秀氏の創業当時(安哲秀研究所の創業は1995年)に比べると環境は良くなっているのでは。

「社会インセンティブシステムが非常に悪くなった。 98年の通貨危機前、若者たちは理系に行こうとしていたが、今は完全に背を向けている。 最近は賢い人たちがリスクを取らず安全志向的に進む。 50年前、私たちは下から3番目だった。 当時、私たちの生存方式は、持つものがないため、他人がしておいたものを一生懸命に追いかけ、見込みがあればオールインした。それで成功した。 ファストフォロワー(fast follower)戦略だった。 しかし問題はこれからだ。 中国が私たちより速いため、今はもうファーストムーバーにならなければいけない」

−−大手企業がファーストムーバーになるには。

「企業文化を変えなければならず、今のままでは不可能だ。 企業生態系をつくり、ベンチャー企業がさまざまな実験をし、その中で成功したベンチャーを引き受ければ、三星電子も革新的な企業になる。 大手企業は長期的な生存のために‘動物園’を作るべきではない」

−−教授として何を教えるのか。

「世の中が変わらない状況で生き残る方法を教える。 それで創業を勧める。 KAIST(韓国科学技術院)の教授だった当時、1学期に3人ずつの割合で創業した。 教授になって最もよかったのは人を変えられることだ」

−−韓国の教育はどんな方向へ進むべきか。

「今の韓国の大学は教育機関ではなく勉強機関だ。 目標が研究の成果に集約されている。 良い大学であるほど学生を放牧する。 学生の教育を気にし過ぎる教授は馬鹿になっている。 大学が教育機関に定着してこそ希望がある。 先日のKAIST学生の連続自殺は社会構造的な問題がKAISTという小さな窓を通して表出したのだ。 自殺が止まったのは家族や知人がかかわり合って関心を見せたからだ。 実質的な措置がなかった。 根本的な解決策を見いださず、学校だけに任せておいてはならない」