G20と韓国、「開国」をめぐる雑感

G20のせいで、子供の学校は休みになっちゃった」
ということで、日本人の友人宅に遊びに行った。

彼女の子供は韓国の小学校に通っている。今回のG20開催は韓国・李明博大統領にとっては大きん政治舞台、ということでとらえた措置が取られてのだけど、一部の学校の臨時休校もその一つだった。その他に自動車通勤の制限や、もよりの地下鉄駅も封鎖、さらに生ごみの排出を禁止など、いろいろ強圧的だった。でも、まあ、国民は慣れているのか、素直に政府の命令に従った。車で通勤できないなら、帰りに酒でも飲もうという、よくわからない便乗派もおり、まあ、私たちもそんなところだ。

この日、友人との話題は以下の通り。

①韓国の小学生の算数の難しさ
②ワインのバーゲンの話
オバマと米韓FTAのこと
④ロシアと中国とどっちが強面か
⑤北欧のカーテンとクッションのすばらしさ
⑥「仙石」(菅)政権はもうダメだ
G20に関して

子供たちと一緒に卓球したり、最近マンション内にできた日本のラーメン屋で食事しながら、よくもこれだけ喋ったなという満足感がある。彼女はロシア暮らしが長く、さらに旦那さんもそっち担当のバリバリの商社マンということで、ロシアには詳しい。私のようにロシア=ソ連スターリン=強面=プーチンという単純な反スタ人間とはちがって、ロシア問題に関しては愛情がある。こういう人が交渉にあたれば、日露関係も人間味のあるものになるだろと、収監中の国会議員のことなどを思い出した。

今の民主党の外交には、こういう人間味のある交渉が見えてこない。
尖閣問題で官房長官は中国側とのパイプとして篠原さん(『妻をめとらば韓国人』という本も出していたっけ)に頼んだとあったけど、なんというか…。官僚や自民党系のパイプを使いたくないとはいっても、これでは…。中国はそんな一筋縄の国ではないと思うのだけど。

それはともかく、韓国はG20を無事に終えた。そして成果もあったようだ。
特にサルコジ李明博の首脳会談のおみやげ(文化遺産の変換)は、李明博的にはかなりのお手柄だろう。
http://www.chosunonline.com/news/20101113000043

また、地震被害で遅れてきたインドネシア首脳へのフォローも絶妙だった。
通貨などの主要議題に関しても、当たらず、さわらずよかったのでしょうね。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2010111302000055.html

そういえば、一時期「韓国経済はつぶれる」というタイプの本が流行ったりしていたけど、あれはどうなったのか。あの本の通りなら、今ごろ韓国は国家倒産しているはずなのだけど。著者はたしかに参議院選挙に出ていたような、ま、いっか。

それはともかく、G20で精彩を欠いていたのはオバマさん、存在感がなかったのはカンさん。
米韓FTAのもつれも、もうアメリカの言いがかりっぽい感じで…。

ところで、なんだか唐突な感じがあるのはTPPをめぐる議論。もっともカン総理の苦悩の表情には既視感がある。盧武鉉政権を最大の危機に追い込んだ米韓FTA交渉、さらに続き李明博大統領にも就任早々の最大試練を与えた米国産牛肉の輸入再開問題。どの国の政権にとっても、「開国」は大きな「賭け」なのだなと思う。

韓国は「果敢に開いてきた」と、日本ではその先行ぶりを評価する声もある。たしかにFTAに関しては、韓国の方が進んでいる。数で言ったら、日本が多いが、相手が違う。韓国の相手にはインド、EU、米国という大物が含まれている。

韓国

ASEAN
チリ
欧州自由貿易連合(EFTA)
インド(India-Korea CEPA インド・韓国包括経済連携協定
ペルー
シンガポール
アメリカ合衆国(議会承認待ち)
EUEU・韓国自由貿易協定):2011年7月発効予定


日本

シンガポール(日本・シンガポール新時代経済連携協定):2002年11月30日発効[1]
メキシコ(日・メキシコ経済連携協定):2005年4月1日[2]
マレーシア(日・マレーシア経済連携協定):2006年7月13日発効[3]
チリ(日本・チリ経済連携協定):2007年9月3日発効[4]
タイ(日・タイ経済連携協定):2007年11月1日発効[5]
インドネシア(日・インドネシア経済連携):2008年7月1日発効[6]
ブルネイ(日・ブルネイ経済連携協定):2008年7月31日発効[7]
ASEAN(AJCEP 日本・ASEAN包括的経済連携協定):2008年12月1日より順次発効
フィリピン(日・フィリピン経済連携協定):2008年12月11日発効[8]
ベトナム(日・ベトナム経済連携協定):2008年12月25日署名[9]
スイス(日本・スイス経済連携協定):2009年9月1日発効[10


韓国が積極的なのは、かつて19世紀の終わりに「開国」で日本に遅れをとり、それによって痛恨の植民地支配を招いたという国民的認識があるため。したがって、「開国」に関しては、その部分を強調すると国民的支持を受けやすくなる。さらに韓国人自身が「外国好き」(ある意味韓国嫌い)。日本好きの日本人よりは、海外との関係に積極的なことも大きい。

ただ、開国はすさまじい苦痛をともなうもの。すでに、韓国の農業はほ壊滅状態であり、農村の疲弊は目を覆うばかりだ。将来的にはサムスンなどの企業が農業分野をも取り囲むことになるだろう。19世紀にマルクスなどが予想したとおり、「農民」という階級は消えてなくなるだろう。

韓国人はもうとっくに選択してしまったように見える。
日本はどうするのだろう。