映画『義兄弟』

アバター』がついに落ちた。代わってボックスオフィス1位の座についたのは、韓国映画『義兄弟』(チャン・フン監督)、2月4日の公開から5日目に100万人を突破し、おりから「旧正月映画」としても大ヒットとなった。
兄は韓国の情報部員(ソン・ガンホ)、弟は北朝鮮の秘密工作員カン・ドンウォン)。映画は北朝鮮からの亡命者を襲撃する工作員と、それを追撃する情報部員の壮絶な銃撃シーンから始まる。
タイトルは任侠物を思わせるが、韓国人ならこのテーマが「南北問題」とすぐに予想できる。ソン・ガンホは過去にも『JSA』(2000年、パク・チャヌク監督)で北朝鮮の兵士として「義兄」で演じており、この時の弟分は韓国兵役のイ・ビョンホンだった。38度線を挟んだ兵士たちの友情は、当時、金大中政権が掲げた「太陽政策」にぴったりの内容だった。
ところで、今回はそんな「正規軍」の話ではない。スパイ組織とそこからの脱落者たちの物語。国家への愛情も、組織への忠誠も、未来への希望も無い。深い絶望の中で出会う義兄弟。これは、最近の南北関係の暗喩なのか。もちろん、ただのエンターテイメントではあるのだけれど。


ここまでは、先週の東京新聞に書いたコラム(「アジア通信」)
で、ここからはプライベートな感想。

すでに600万人動員を達成したそうで、またまた殿堂入りのようですね。
ソン・ガンホは今回は「ハマリ役」。「殺人の追憶」「グェムル」「シークレットサンシャイン」と同じタイプのキャラクターだ。
世間は彼をヒットメーカーというけれど、「ハズレ役」もある。「大統領の床屋さん」「南極物語」「コウモリ」などは、興行的にも失敗しいてる。

この映画、いわゆる「南北モノ」であり、途中で、北の家族への思いなんてのも出てきて、あれ?「旧正月映画」なんて見せ方もするのだけど、本当はめちゃくちゃニヒリズム
最後のシーンは大いに笑った。(中には怒る人もいると思う。)

監督はキム・ギドクの弟子だからね。パク・チャノクやカン・チェギュみたいなベタな映画は作らないだろうと思ったけれど。
「サヨウナラ韓国」映画。ポン・ジュノの『マザー』はわかりにくかったから、こういうのいいんじゃないか。