金正雲氏とスイス留学

毎日、韓国と日本のニュースを両方見ているけど、もっとも違うなと思うのは「北朝鮮」への関心。核から後継者問題、日本の報道は熱い。
沸騰する報道合戦の中、テレ朝は変な写真をつかまされてタイヘン。
一方で、着実に仕事ができているなと思うのが毎日新聞の澤田克己記者(彼の『脱日する韓国』は面白かった。)この人が、この時期にジュネーブ支局にいたことは、「毎日」にとってはとてもラッキーだと思う。韓国語が堪能で、韓国のネット情報に敏感な彼なら、少なくともあんな写真はつかまされないだろう。(もっとも、ああいう「持ち込み」のたぐいは金持ちなテレビが狙われやすいのだけど…)。

ということで、「毎日」の写真は本物でしょう。

さて、彼の14日付けの記事によれば、金正雲氏はベルンのインターナショナルスクールではなく、地元の公立中学に通っていたこと。インターに通っていたのは次男の正哲氏で、スイスのメディアはそっちの写真を間違えて報道してしまったという。(テレ朝だけではなく、世界のメディアが振り回されている)
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20090614k0000m030119000c.html
  
 記事の最後には、「韓国政府筋も‘欧州の人には、東洋人の区別は難しいのだろう’と苦笑交じりに話している。」とあるが、それもありうる。ずっと以前、ドイツの権威ある百科事典を見ていたら、林彪の写真のところに周恩来というキャプションがついていた。それは文革の頃の写真で、あのあとすぐ林彪は批判されて、写真からも抹消された。有名な写真なのだけど、ドイツ人にはよくわからなかったのだろう。

それはともかく、金正日総書記の子供たちはすべてスイスで学校に通っていた。
長男正男氏…80〜81年にジュネーブで。
次男正哲氏…93〜98年にベルンで。
三男正雲氏…98〜2000年までベルンで。
娘    …96〜2000年 ベルンで小中学校。
澤田氏は金正雲がなぜインターではなく、公立の中学にいったのかにも疑問を投げかけている。
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20090614k0000m030118000c.html

私は単純にインターは韓国人が多すぎて、その接触を心配したためだと思うのだけど違うのかな?というのは、90年代後半は、韓国人のスイス留学が、非常に増えたからである。
特にボーディングスクールは、韓国の富裕層にとって、韓国国内の受験ヒエラルキーからの格好の逃避先だった。
日本のように幼稚園から大学までの一貫校がない国。平等主義の建前上、フェイントは海外しかなった。
知り合いの息子さんは、小学生の同級生の父親に大手財閥の御曹司に誘われた。
「学費は全部持つから、中学から一緒にスイスに行ってほしい」
知り合いは「学費はいりません。私の力で行かせます」と、見栄を張ったはいいものの、その後に会社が傾いて息子をスイスから呼び戻している。また、別の知り合いも中学の途中から子供をスイスに送った。
「成績も悪く、韓国ではいい大学に進めそうもない」
クラスメートには自家用ジェットで帰省するようなアラブも富豪もいて、「格差」(身分差?)に苦労したとか。

いずれにしろ、韓国人が多く行っているインターやボーディングは当然避けられただろう。
金正雲氏も当初は言葉の壁に苦労したというから、そこに同族があらわれたら、そっちに行ってしまうよね。

ということで、ちょっと前まではジュネーブ支局からWHOとインフルエンザの記事ばかりを書いていた澤田さんが、生き生きと朝鮮半島関連の取材。水を得た魚というのでしょうか。うらやましいです。