誰が盧武鉉大統領を…。

盧武鉉大統領のことがあってから、なんか元気がでなくって…」
 という人が多い。
 そうだよね。あんな死に方をされてしまったら。

 そんなときの北朝鮮の「花火大会」。
 「隣にお葬式をしているうちがあるのに…」。ふたんは北朝鮮の批判をあまりしない人も、さすがに今回は怒っていた。 
 「北朝鮮は結局、我が国(韓国)なんか眼中にない。見ているのはアメリカだけ」
 MBCのキャスター。

 そうだよね。北朝鮮が仲良くしたいのは、韓国ではなくアメリカ。典型的な事大主義だ。(その意味では韓国も同じだけど)。だから盧武鉉大統領に対しても冷たかった。露骨な「格下扱い」。よく我慢したよね。

 私は前回の日記に、盧武鉉大統領を追い詰めたのは、敵の攻撃よりも、味方の冷酷さだと書いた。なかでももっとも冷たかったのは金正日だったと。それとともに家族のことも書いた。
 
 自殺の直接的な原因となったのは、一連の収賄疑惑だ。盧氏本人は「知らなかった」といい、妻である権良淑女史(62歳)も「私の一存で受け取った」と。しかし検察は「そんなはずはない」と盧氏を召喚したが、はたして彼は否認し続けたという。
盧氏は本当に「知らなかった」のだと思う。だって、韓国では、それが普通だから。だってそれは「妻の領域」なのである。

これまでの調べでは、賄賂の大部分は子供たちの米国滞在費(学費と不動産購入費)にあてられたという。現在、スタンフォード大学の大学院に通う長男(36歳)と、ニュージャージーに住む長女(34歳)。長女の購入した家は「豪邸」として、その写真までマスコミに取り上げられた。
「反米派の大統領が、ドルで献金を受け、それで子供たちをアメリカに留学させていたとは。これは国民に対する裏切りだ」
事実は発覚したときには、国民の多くは憤った。庶民の味方だと言っていた大統領が、賄賂で子供たちを海外に送っていた。「一度も米国に行ったことがない」のを看板に当選した大統領が、である。
しかも長男は、過去にこんな発言もしていた。
「このまま一サラリーマンとして、平凡に暮らして行こうと思います」
それがいつのまに米国に? 一方、長女の方は弁護士である夫の留学についての渡米だというが、いずれにしろ、この2家族(孫たちも含めた)の滞在費を、権女史は夫の後援者に出してもらっていたらしい。
 「大統領に言うと怒られると思って、自分で処理しました」
 だって、これは庶民派であり、愛国者である盧大統領の信条に反する。しかも後援者のお金を頼むなんて…。

「でも、妻としては、そうするしかなかったのですよ。だって、大統領にはお金がないのだから。」
「そもそも大統領の子供たちが、韓国ではちゃんと暮らせるはずがない。マスコミはうるさいし、できるだけ早く、米国に拠点を持たせようと思うのは、母親としては当然」
それまでは巷にあった盧大統領一家への批判は、自殺後に一転して同情論に変わった。なかでも妻である権女史に対しては、「清廉潔白な夫の顔に泥を塗った」という批判よりも、「貧しかった夫を支えた糟糠の妻」という過去のイメージに戻っている。
貧しい農夫の息子として生まれた盧武鉉氏。中学を卒業して働こうとしていたところを、兄の薦めで商業高校へ。その後、高卒の学歴のまま働きながら司法試験の勉強をした。勉強中に妻と出会い結婚。その2年後に司法試験に合格した。「いままでの苦労はむくわれた」と妻は思っただろう。
ところが平穏な日々は長くは続かなかった。夫は人権派弁護士として民主化闘争に参加。1987年には逮捕されて弁護士資格を停止。政治家の道を決意するが、何度も落選の憂き目に…。
天下国家を語る夫の影で、妻はなんとか生活費を工面しながら、子育てをしてきた。政治をするにはお金がやる。もともとの資産家ならともかく、普通の庶民が大統領になろうとしたら、誰かが汚れ役を引き受けるしかないのだ。
ニュージャージーの長女の「豪邸」は、その後、目撃者のブログなどで、実は「普通のアパート」であることがわかってきた。契約金が払われただけで、残金は未納だという。
「お母さんが、払ってくれると言っていた」
取り調べに、娘はそう答えていた。死んでしまった大統領もかわいそうだが、この家族はこの後、どうやって生きていけばいいのだろう。