オバマと金大中

私自身の頭の体操のため、少々、堅いお話ですが。

時々拝見している、田中宇氏のブログの冒頭にこんな話が。

かつて東ドイツ共産党員だった80歳代の女性が、昨今の米国の金融危機について語った、以下のくだりである。
「(米金融危機は)驚くようなことではないわ。独占資本主義から、国家独占資本主義に移行する際、大きな危機が発生するのは当然よ。これは、あなたたちのシステム(資本主義)の、最後の段階なの。(東独の)共産主義政権時代には、このことは、子供たちが学校で教わる(基礎的な)ことだったわ」

http://tanakanews.com/081021bank.htm

続けて氏は、米国やヨーロッパが今回の金融危機に対して行った国家的行動を、マルクスが言っていた国家独占資本主義じゃないかと「揶揄」し、その後に例のネオコントロツキスト云々の話をもってきている。

今回の金融危機ネオコンの最終敗北と見るかどうか知らないが、少なくてもアメリカの政権交代は決定的となっている。

ところでそれに関しては、こんな意見も読んだ。

金融危機のシステム的な問題は解決しつつあるが、米国の不景気はここ数年続くだろう。混乱は火を見るより明らかであり、そんなことにかかわりたくない共和党は自ら「負け」を望んでいる。その最大戦力が副大統領候補。経済のケの字も知らない彼女をもってきたのは、すでにそこで白旗を揚げたという意味とか。
うーん、そうなのかな?

今の米国を見ていると、11年前の韓国を思い出す。通貨危機で瀕死の状態の中、行われた政権交代。倒産寸前の国家を任されたのが、民主党金大中候補だった。
当時の金大中と今のオバマは、国の規模こそ違うが、立場は非常に近いものがある。オバマがカラードの初の大統領候補だとすれば、金大中は初の全羅道出身の大統領だった。「全羅道出身」という言葉は韓国人ならピンとくる。この地域の人々は長い間、社会的に疎外されてきた。金大中は疎外階層、つまり「マイノリティーの味方」というイメージが強かった。

ところで、当時の金大中大統領に対し、内外の評価は決して肯定的ではなかった。彼がずっと「反体制運動側」にいたことで、実務的な政治能力はないのでは、とくに経済危機を乗り切るような手腕がないのでは…。
ところが彼は違った。もともと、彼は思想的には左翼ではなかったし、ものすごい現実主義者だ。IMFの突きつける条件を次々に飲み込んで、新自由主義的な政策を断行した。
しわ寄せは「底辺」にきた。そこは金大中民主党の支持層だった。「裏切り」とは思わなかった。「我らの大統領」のために我慢した。
「もし、金大中でなかったら暴動が起きていた。」というのは、大げさな言い方ではない。
 オバマはどうだろう? 彼の支持者は彼と一緒になら冬の時代を耐えられるだろうか?

ところで、昨今の金融危機で、韓国に関して10年前の同じような論点で語る人も多い。ウォンの価値が高すぎたのはあの時と同じだが、前回のようにヘッジ・ファンドが仕掛けた通貨危機ではない。今回は、韓国企業・韓国個人が積極的にからんでいる。
政府は通貨や景気対策にどんどん公金を投入する構えだ。公金=税金はノムヒョン時代に一生懸命集めたからね。余裕があるのだろう。
金大中時代に開花した新自由主義は、イ・ミョンバクをして国家独占資本へ。もちろんマルクスが言っていた話とは、まったく違うのだけど。