若年ホームレス

 「韓国にも格差はありますか」と聞かれることがある。
格差を生活レベルの差と理解するなら、それはもう当然あるに決まっている。ところで、問題はもう一歩踏み込まなければならない。
① 格差にともなう貧困はあるか?
② その貧困が固定化してしまっているか?
格差はある意味では「やる気」にもつながる。ところが、普通に暮らせないほどの貧困は話があれば話は別だ。また、その貧困が一時的なものではなく。長期にわたるものになると深刻だ。さらに、貧困が代を経て続くようなことがあると、それは社会にとっても影響が大きい。

こういうことを考えたのは、あるテレビ番組がきっかけだ。韓国の人気番組『それが知りたい』(SBS)の「路上の捨てられる若者の希望」(7月26日放映)。最近の韓国で問題になっている「若年ホームレス」がテーマだった。
「もう2年もこんな暮らしてしている」
と番組の冒頭で言ったのは、、駅の地下道に寝泊りしていた若い男性だ。Aさん(34)は、2005年までは米国の大学で映画シナリオの勉強をしていた。家の事情で学業を中断。韓国に戻ってきたが仕事がない。幼い頃にも米国で暮らした経験があり、英語には自信があったのだが。
「でも、学歴がないから正規には雇われないんです」
ネットで探した英会話教室のアルバイトなどを細々と続けていたら、「いつまでフラフラしているんだ」と父親にとがめられた。典型的な「自主成家」(自分の力で成功した人をあらわす韓国語)である父親にとって、彼の生き方は「甘えている」としか思えなかった。
父親と喧嘩して家を出た彼はインターネットカフェなどを転々としながら、仕事を探し続けた。
「工事現場の仕事もしたけど、もうなんか…。」
今は福祉団体や教会の無料給食に頼ることに多いという。

番組には彼以外にも20〜30代の「青年野宿者」(韓国語の表現)が何人も登場していた。
「1997年の金融危機のときは、リストラされた40〜50代の人々が路上に放り出されました。でも、最近は若い人が目に見えて増えている。」
炊き出し支援などのボランティアをしている人々は口をそろえる。
一方で、行政側の実態把握は遅れている。理由の一つは。かつてのホームレスが駅周辺や労働者簡易宿泊所などに居場所を「特定」していたのに比べ、若い彼らの多くはネットカフェ、チムチルバン(韓国式サウナ)、漫画喫茶、路上などを転々としているからだという。
「事態はとても深刻です。中高年のリストラも問題ですが、若い人々がスタートの段階でつまずいてしまうのは。国の将来にとっても心配だ」
専門家の話はまったくその通りだろう。それは、おそらく日本とも共通する話だろう。