終わりなきロウソクデモ

昨日、ライス国防長官がソウルを訪れた。
記者会見での質問には米国産牛肉の輸入反対デモに関することも含まれていた。
「民主主義とは騒がしいもの。静かな独裁よりよっぽどいい」

さらっと答えた彼女の表情と、抑揚のない英語がかなりクールだった。こういう答え方があったのだなと、ちょっと感心。
「静かな独裁国」がどこかは言わずと知れている。牛肉云々という瑣末なことではなく、ポリシーを喋ってしまうところは、やはり一枚上だ。
韓国の政府も、野党も、デモ隊にも、それがない。

毎日、報道されるロウソクデモは、正直もううんざりだ。
マスコミはテレビ局がデモ隊の主張を全面支持の偏向報道、新聞は大手3社がそれに反対する偏向報道
マスコミが主張を持つのは悪くないがやりすぎだ。

さらにネットでの市民ニュース、生放送などは、戦闘場面ばかり。
機動隊と市民の対決に酔っている。
画像だけ見ていたら、映画みたいで楽しいけど、私の心の中に「馬鹿みたい」という感情が沸いてくるのがイヤだ。
新聞社にゴミを撒き散らす。系列ホテルに観葉植物で抱えて突撃。さらに機動隊の放水に対して、デモ隊も路上の消火栓を利用して放水返し。

「一生懸命な人をバカにしていはいけない」というのは、うちの母の口癖だ。子供の頃から、母に叩き込まれた。とくに、外国の人をバカにしてはいけない、とも思っていた。
でも、もう限界だ。
はっきり言って、バカみたいだと思う。

私はもともと韓国人は好きだけど、韓国という国は嫌いだった。そういうタイトルの本を、韓国で出したこともある。
韓国人も韓国という国が嫌いなので、これはまったく共感される。でも、その韓国人が嫌っている韓国に、反対運動する側もどんどん似てくるのだね。

「ああ、もううんざりだ」
昨日、うちのアパートのお掃除のオバサンは言っていた。こういうのが続くと、善良な人々はすべてが嫌になってしまう。


いまだに年間1〜2万人が米国に移民する韓国。カナダやオーストラリアに行く人も多い。
私も韓国人だったら、行くだろうな。
外国人の私だって「うんざり」するのだから、当人たちはどれほどしんどいか。

昨日は友人の特派員の女性だけの送別会があった。
このデモがいつまで続くのか、話題になった。
私としては、オリンピックあたりで平和的なナショナリズムに切り替わって落ち着けばいいと思っていたのだけど、それは楽観すぎるみたい。皆さんはもっと悲観的。たしかに反政府側は、次々にカードをいっぱい持っている。

イ・ミョンバクはどうするのだろう。
これまでの政権だと、「ノ・ムヒョン逮捕」というのも想定されるのだけど、今回は無理だろうな。そもそも政権奪取とともにマスコミの掌握をしなかったイ・ミョンバクは、つまり、国民を侮っていたのだなと思う。

私としては、このデモ隊が「独島」に流れないのを祈るだけだ。
(もう、自分のことしか考えていない…苦笑)