怒りの蓄積

みんな怒りがたまっているのだなと思う。

日本は秋葉原の事件で騒然としていると思うが、韓国も一時触発の状態だ。牛肉をめぐるデモも、すでに別の段階にきている。

昨夜、家に帰ってテレビをつけたらニュースの時間だった。今や、韓国全土に広がった「ろうそくデモ」。暴力を批判された機動隊が「おとなしく」する一方で、今度はデモ隊がキレた。画面には鉄パイプやバーナーで機動隊に襲い掛かる人々。ついに機動隊のバスを横倒し。また、数日前には焼身自殺を図った人もいた。(全身やけどで重態)。

デモのテーマこそ「米国産牛肉云々」であるものの、怒りの対象は「われわれを弾圧する」イ・ミョンパク大統領と新政府そのもの。もうこれは反政府デモと言ってもいい。

ただ、デモの結果が「政権交代」ということはありえない。独裁政権時代とは違い、民主主義的な手続きで選んだ大統領だ。しかもわずか半年前に行われた選挙は現政権の「圧勝」だったのだ。

「でも、彼はもともと犯罪人(BBK事件などの汚職事件)だった。それを目をつぶって選んでやった。前の政権(ノムヒョン政府)が、国をめちゃくちゃにしたから、まったく毛色の違う彼に期待したわけだ。でも、さらに悪くなった。裏切られた」

昨日、乗ったタクシーの運転手は、走行中ずっと怒っていた。

一ヶ月も続くデモのせいでソウル市内の交通は麻痺。タクシー運転手の疲労は限界に達している。「これも政府のせいだ」と。さらに原油価格の高騰にもかかわらず、タクシー料金の値上げは抑えられている。

目減りする収入は、社会不満の根源となる。

ガソリン代の高騰といえば、運輸労組のトラックがデモを宣言。これが始まると、交通網は完全に寸断される。

彼らの多くは軽油を使うが、この間、税金の関係もあり、軽油の方がガソリンよりも高くなってしまった。だから灯油を使ったら、それがバレてマスコミに批判された。もう、決起するしかない。

みんなが怒っている。

タクシーの運転手はさらに、家庭の事情も話し出した。

「妻の父が自殺したんだよ。農薬を飲んで」

「!!! そんな大変な…」

高齢者の自殺は最近増えている。しかも農業従事者は飼料の高騰などで、苦しくなっているという。政府への不満も大きい。これは気の毒な話だ。と、思ったのだが…。

「でも、死ななかった。よけい元気になった。」

お父さんという人は、若い頃から酒飲みで、一族みんなに迷惑をかけてきた。そこで「もういいかげんしろ」と妻や娘が酒を取り上げたら、「なら死んでやる」といきなり納屋にあった農薬をがぶ飲みしたそうだ。すぐ病院に運んで、胃洗浄。一命を取り留めた。

「そうしたらさらに元気になった。農薬のおかげで、腸の中の悪い細菌などが死んだらしい。」

怒りと怒りの連鎖。かしこで怒りが蓄積されている。