韓国でする一人グルメ その21 梨泰院のハラル料理

先日、米国人の友達と一緒に、米軍のベース内にあるレストランで食事した。とてもアメリカンな雰囲気のお店でいただいたのはスペアリブとチキンサンドイッチ。食べながらとても懐かしい気持ちになった。留学生として初めて韓国に来た90年初頭、ソウルの街には今のような多種多様の外国レストランはなかった。
ハンバーガーショップとピザ屋が数件、市内には本格的な「西洋料理」の店はほとんどなかったので、我々留学生はよく米軍基地周辺のレストランに行った。
「あの時は、基地周辺のレストランがとてもおしゃれに見えたのだけど、今はなんだか寂れて見えるね」
20年来の友人と話しながら、周囲を見渡した。

梨泰院という街は20年前も今もあまり変わらず、メインストリートには観光客相手の小売店、裏通りには各国料理の店が散在する。でも、そのレストランの種類が大きく変わった。以前は幅を利かせていた「内国人お断り」と書かれた米兵御用達のような店は姿を消し、代わりにアフリカや東南アジア料理のレストランが増えた。特にハミルトンホテルの東南方向に広がるエリアは観光客向けというより韓国に出稼ぎに来る「外国人労働者」向け、店がまえも価格も庶民的だ。

その町の中心にはモスクがある。1969年、当時の朴正煕大統領の指示で韓国政府が約1500坪の土地を喜捨し、サウジアラビアなどのイスラム国家が建設費用を支援した。1974年にから工事が始まり、1976年に完成。以来、韓国全土からイスラム教徒が集まるところになっている。美しいモスクは観光名所でもあり、地元の子供たちとの文化交流なども熱心に行われている。
「外の世界では国家や政治などの問題もありますが、モスクの中ではみんな一緒に平和を祈ります」
パキスタン人のボランティアガイドが話してくれたことがある。

モスクの周辺は多国籍料理のレストランがあり、私はそれを目当てによく出かける。もっとも目立つのがトルコ料理とインド料理、でももっと珍しいものも食べてみたい。ある店の前には写真入りのメニューが出ており、ナシ・アヤム(ローストチキン)が6000wとお手ごろだ。その他、見たこともないメニューもかなりある。


「ここはどこの料理ですか?」
「マレーシアとエジプトの料理です」
よくみると二つの国の国旗がかけてある。マレーシアとエジプト、なるほどイスラムつながり、つまりハラル料理の店のようだ。マレーシア料理に関しては、少々知識があるのだが、エジプト料理はさっぱりわからない。その話をしながらナシ・アヤムを注文すると、せっかくなら食べたことのないエジプト料理にしたらと言われた。それもそうだなと思い、鶏肉とトマトの料理を注文した。ナンとご飯が選べるそうなので、ナンを注文、ディップしていただいた。

そうしていると、隣の席のマレー語を話す団体客に大きなローストチキンがやってきた。今まで見たことのないような大きさで、注文した人々もざわざわしていた。こんがりとやけた特大チキン、あれで6000wは安い。今度はあちらを注文してみようと思う。