なぜ韓国で? マーズ(MERS)感染拡大の背景について

昨年のセウォル号に続き、韓国の市民生活を直撃したこの問題。学校は休校、行事は延期。昨年、修学旅行や遠足をキャンセルした学校は、今年もまた同じような状況になっている。
「子供たちは可愛そうだけど…」、仕方がない。

ただ、報道されるほど市民生活が萎縮しているわけではない。マスクをしている人が登場する画面の多くは、そこを切り取って報道しているわけであり、私が見た目ではソウル市内に限れば約1割ほどかなと思う。さらに、近づいてみると、その多くは「外国人観光客」であることがわかる。今回は感染者が香港・中国を旅行していたこともあり、中華圏での警戒心は大きい。韓国旅行のキャンセルも7万人と発表されたが、その多くは中国・香港・台湾からの観光客が占める。

韓国の人がマスクをしていない(はずした)のは、マーズの感染経路がほぼ明らかになったことが大きい。現状は「院内感染」であり、感染したのも「病院スタッフ」「同室患者」「見舞い客」など極めて近くにいた人々のほとんど。うち重篤化したり亡くなったのは闘病中の高齢者等であり、その意味では当初心配された「変異」ではないようだ。
すでに政府保険当局からも「ウィルスの変異はない」ことも発表されており、つまり、風邪やインフルエンザと同様の対策をすれば感染はしない。ということで、一時のパニックは収まった。これまで韓国メディアの報道や政府発表に釘付け状態だった私にも、少し心の余裕ができた。

そこで2点ほど気になることを書いておきたい。まずは中東で流行している病気がどうして韓国に入ってきたか。もう一つはなぜ韓国で感染が拡大してしまったのかということだ。

一つ目の点に関しては、韓国と中東との関係が日本人が思っている以上に強いこと。日本企業はこのエリアでいつのまにか遅れをとってしまっている現状がある。これに関しては、イスラム学者である池内恵氏の「MERS(中東呼吸器症候群)がなぜ韓国で?」の説明がとてもいい。池内氏自身の留学時代のエピソードなどを含めて、韓国人・韓国企業の強さがわかる。
http://ikeuchisatoshi.com/mers%EF%BC%88%E4%B8%AD%E6%9D%B1%E5%91%BC%E5%90%B8%E5%99%A8%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4%EF%BC%89%E3%81%8C%E3%81%AA%E3%81%9C%E9%9F%93%E5%9B%BD%E3%81%A7%EF%BC%9F/

さらに付け加えるのなら、現在の韓国人・企業の中東進出には「前史」がある。70~80年代、韓国がまだ貧しかった時代、多くの韓国人労働者が砂漠の建設現場に派遣されていた。現在、公開中の韓国映画『国際市場で会いましょう』もそこにふれられている。
一方で、中東との強い絆のわりには、MERSへの対策はされていなかった。もっとも、では他の国がどうだったかという点には関しては、「韓国政府だけを責められない」という専門家の意見もある。
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150605-00010001-wedge-kr&p=1


反面、私がネットなどを通して心配になるのは、感染拡大の原因を「韓国人の国民性」に求める意見だ。たとえばこんな記事もある。
「韓国MERS危機は共同体の安全を考えぬ国民性から」
http://blog.dandoweb.com/?eid=186248
>>韓国の中東呼吸器症候群(MERS)流行が病院内感染の枠を超え、地域拡散の様相すら見せ始めています。この危機を生んだのは無能な役人と医療関係者、そして共同体の安全を考えぬ手前勝手な国民性にあると見えます。